先日、卒業設計の提出が済んだ。
これで晴れて卒業。

以下、発表資料に書いてある事の要約。
要約といっても長ったらしいのでご注意を。

使用したソフト・材料の詳細はこちら
裏テーマはこちら

「ジュクショ。 -東京社会復帰促進センター新設計画-」

Prologue – 序章

今、刑務所が圧倒的に足りていない。
刑事施設の収容率の平均は110%を越えている異常事態である。
昨年発行の犯罪白書によれば、出所後の再犯率は40%を超え、さらに毎年3000人~4000人もの新規受刑者が刑務所に押し寄せ、新たに刑務所を新設することが急務である。

刑務所は言うまでもないが、罪を犯した人を収容し、更生させるための建築である。
しかし、上記の再犯率や、新規収容者の増加など、現状の刑務所が健全に機能しているとは言い難い。

刑務所は規則正しく、変化しないことが前提である。
毎日必ず6時半に起床し、懲役刑として収容されている受刑者は17時半まで労働をし、残業も休日出勤も存在しない。
そして現代的な職業に対応した職業訓練プログラムが用意され、珍しいものではパソコンのプログラミング、女性はエステを学ぶことが出来る。
資格取得の合格率は80%を超え、栄養を計算された無料の食事、そして無料の医療福祉サービス。
それらは全て懲役期間の中に組込まれ、こんな皮肉は冗談で済まされる話ではない。

冒頭で述べた再犯率が約4割、毎年3000人以上の収容者の増加の原因は実際に収容されてみないと分からない部分が多くある。
しかし、外から現状を見てみると、刑務所の立地と我々ソトとの関係が大きな要因であると考える。
刑務所は通常、駅や空港などの交通インフラから意図的に遠ざけられ、郊外または農村部に位置している。
そして高さ5メートルの厚いコンクリート壁でおおわれ、周辺からも内部からも互いの様子を知るきっかけがない。
この二つの要因を刑務所を都市の中心、そして繁華街に置くことで、収容者の社会復帰への糸口となる新しい刑務所ができるのではというのが、このプロジェクトのアウトラインである。
新宿に出来る社会復帰促進センター(刑務所)、新宿刑務所。略してジュクショ

Location – 立地

都市部に置くことは、犯罪が起こる場所とそれを償い場が遠すぎる事が、
長期間のどかな農村部で刑務官からの命令のみに従い続ける受刑者にとって、自分がどこで何をしてなぜここにいるのかを忘れてしまうことを防ぐのが主な理由である。

敷地は歌舞伎町一丁目の、現在は一昨年閉館したコマ劇場があるブロック約5700㎡全てとした。

ここにした理由は大きく2つある。
まず、刑務所は特異すぎた存在であり、人殺しや薬物中毒者を多く収容する建築が近くにあるだけで住民は心理的不安を強いられる。
そして都心部とはいえ、人通りの少ない場所では、刑務所の存在感に周辺が負けてしまい、周囲一帯に負のイメージをあたえかねない。
よって、人が住みつかず、刑務所の存在感に負けない力強い歓楽街が望ましい。

その歓楽街は、たいてい駅周辺で発生し、結果的に都市部の中心付近に位置している。
通常治安の良いおだやかな場所に刑務所が出来れば、上述した様に良からぬイメージに街が染まる。
しかし、犯罪多発地域である歓楽街であれば、逆に周囲に対し犯罪抑止力として働き、刑務所が街の自浄作用として働くのではないだろうか。そして刑務所は機能から非日常的な存在であり、図書館やミュージアムなどの道徳的な公共施設のように、容易に周囲と溶け込めない。なので街のカタチにあわせて協調させるよりも、象徴性を帯びた街のシンボルとして大通りのアイストップと広場に面した中心部においた方が良い。

Form – 形態

形態は既存の平面状の刑務所を、敷地の特徴に従って高層化させた。

まず、敷地に一般的な刑務所をおいたとすると、周辺の中層ビルは5Mという塀を軽く飛び越え、
周囲との境界が保てない。

よって、周囲から覗き込めない高さを確保し、さらに一般的な2000名規模を収容できる刑務所のボリュームを配置する。

このままでは内側外側ともに圧迫感がありすぎてしまうので、人通りの多い大通り(赤)とコマ劇に面した広場(黄)の地上から自然に見上げた視線の高さに合わせ、2つの風穴を開ける。


塀の代わりに収容施設が敷地を囲み、内側にできた巨大な吹抜けを通して、既存では確認することが出きなかった等級や立場の違う収容者と、距離と高さをもって視線が交わり、開けた2つの穴は我々ソトの人と同じく距離と高さをもってかかわることが出来る。

Facade – 外観

外観は金網がはいった厚い黒いスモークガラスで覆われている。
存在感を示しつつも街の雰囲気をそれによって壊さないという矛盾といえる条件を与えた。
歌舞伎町へ行く人たちは、何かしら意識を高揚させ、ドキドキワクワクした状態で足を運んでいると思われる。
近寄りがたい危険と隣合わせで、どこか危ない場所を探検するような感覚こそがグレーな歌舞伎町の魅力である。
それを壊し、ファミリーや子供が夜遅くまで安心して過ごせる歌舞伎町になってしまうのを望んでいない。
黒いスモークガラスは、朝夕夜と3つの表情を作る。
朝早い刑務所と夜遅い歌舞伎町は、生活時間帯がちょうど半日ずれている。
このズレを表情の異なるファサードで、共存しにくいと思われる都市部と刑務所とをリンクさせる。

朝。眠らない街と言われる歌舞伎町は寝ている。
その頃刑務所は目を覚まし、青空と真っ黒のコントラストが目立たせる「刑務所がある歌舞伎町」である。
日中、大通りを通る人と、広場にいる人が、斜めの穴から働く受刑者を遠くで見ることが出来る。

夕方。空が暗くなり出す頃、刑務作業を終えて各自収容棟に戻る。
同時に歌舞伎町は徐々に人が集まり、眠り始める刑務所と動き始める歌舞伎町が交代される数時間、
周囲の人に刑務所の存在感を知らせる。

深夜帯。歌舞伎町が目を覚まし、今日も朝になるまで活発に動き続ける。
歌舞伎町が最も歌舞伎町らしい時、刑務所は消灯、就寝し、黒い壁が暗闇と同化し、存在を消し去る。
見えにくくなり、いつもとかわらない歌舞伎町がそこにはあるが、周囲の人には「そこに刑務所がある」という記憶だけが残っている。

Interface – 接点

都市部にあるからといって、ここは開放的な刑務所ではない。
ソトから透明ガラスにおおわれては、動物園の様に見世物小屋になり、そこにできる上下関係は嘲笑の的になるだけであり、
本質的な社会復帰、再犯率の低下などの問題解決に成りうるとは思えない。
ソトからは半透明の黒いガラスで覆われ、見ることの出来る2つの穴でソトとウチとを視線を交換する。
視線に合わせたナナメの内部は、非日常的な空間を作り、落ち着かない緊張感のある工場である。
右下の赤い人々、大通りの80Mから工場を眺める。
刑務所の原型と呼ばれるパノプティコンでは、看守からいつ見られているかわからない監視の目が、更生への糸口になるとされてきた。
しかし、その見る見られるの関係を断ち切り、支配者的立場にある看守の存在が次第に大きくなり、自らは何も考えず命令にただ従い続け、他では看守によるイジメ、暴力なども見えない所でおこなわれてきた。
ここでは、その監視の目は看守ではなく、私たちである。
好奇心から見上げるか、憎しみの目で見上げるか、不特定多数の視線の目的は一致していない。
それがパノプティコンに変わる現代のパノプティコンである。

PLAN-平面図

1F-4F

5F,6F基準階,13F基準階.29F(最上階)

Model-模型写真

DATA-資料、その他

Building use: 社会復帰促進センター
Address:東京都新宿区歌舞伎町1丁目19
Site area: 5700㎡
Use district:商業地域

Total floor space: 91630㎡
Structure: SRC

Prisoners:2000 people
Staff:500 people

使用ソフト
Drawing:Autocad
Modeling:Google Sketchup、3dsMAX
Rendering:Kerkythea Echo、V-ray
Layout:Illustrator、Photoshop
Other:Photosynth

模型材料
Carbon fiber reinforced plastic (CFRP)
White corrugated fiberboard
Balsa wood
PET Sheet
Plastic corrugated fiberboard
White LED

Special thanks
株式会社ネクスト (CFRP材料提供)
www.next-craft.com

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6 Comments on “ジュクショ。”

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  1. Okappi Okappi says:

    すごい!29日、19:30頃にいきます!じっくりみます。

  2.  mrkutai says:

    okappiさま

    了解。ありがとう。
    お待ちしてます。

  3. リバー リバー says:

    1番はじめのCGかっこいいですね~。
    (これぐらいのCGがあればプレゼンもかなりうまくいったのでは!?)

    歌舞伎町にこういったものを持ってくるのも斬新でした。

    また訪問させていただきます♪

  4.  mrkutai says:

    リバーさま

    どうも、twitterでお世話になってます。
    トップのはsketchupのモデルから直接maxで友人に設定してもらい、後不都合な所をphotoshopで加工しました。
    内容が内容なのでプレゼンで何言われるかドキドキしていましたが、意外と反応が良かったので途中からは問題ありませんでした。

    podiumは全く使ったことがないので、今後もどんどん事例を貴ブログでご紹介くださいませ。

  5. Sushi-Man Sushi-Man says:

    Nice work dude :)
    you have ability… the real model looks awesome.

    5+stars

    /Sushi-Man/ ;)

  6.  mrkutai says:

    Mr Sushi

    Thanks for leaving your comment.
    Ill tell you when this project is published!

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